〔手事〕
〜夜半の砧の時雨（しぐれ）の雨と、夜半の砧の時雨の雨と、うち連れ立ちて、今日の遊びは。
「月の前の砧」−『白氏文集』「聞夜砧」「月苦風凄砧杵悲、八月九日正長夜、千声万声無了時」。謡曲「砧」「月にはとても寝られぬにいざいざ衣擣たうよ」による。
「夜寒を告ぐる」−謡曲「砧」の「衣に落つる松の声、夜寒を風や知らすらん」
「雲井の雁は…」−菅家「碧玉（へきぎょく）の装（よそほ）ひさせる箏（しょうのこと）の斜に立てたる柱（ことじ）」（『和漢朗詠』雁）
「夜半の砧の時雨の雨と」−謡曲「雨月」「秋の恨みの小夜衣月見がてらに擣たうよ。時雨せぬ夜も時雨する木の葉の雨の音づれに…露をも宿す月影に重ねて落つる紅葉葉の……積もる木の葉をかき集め……」の趣き。
「今日の遊びは」−謡曲「鷺」「秋は時雨の紅葉狩」。
菜蕗 第三歌
「月の前の調（しらべ）は、夜寒を告ぐる秋風、雲居の雁が音は、琴柱に落つる声々。」